【レビュー】Starcatcher / Greta Van Fleet (2023)

【レビュー】Starcatcher / Greta Van Fleet (2023) レビュー
【レビュー】Starcatcher / Greta Van Fleet (2023)
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若きクラシックロックバンドによる、深遠な哲学と大衆性を両立した3rd

アメリカはミシガン出身の4人組バンドGreta Van Fleetのニューアルバム“Starcatcher”が、
2023年7月21日に発売されました!
彼らが注目されたポイントは何といってもその若さと、ブルージーなハードロックという音楽性
ビルボードのメインストリームロックチャートで1位を獲得した1stフルアルバム、
“Anthem Of The Peaceful Army”を2018年にリリースした際には、メンバーは皆20歳前後。
そして音楽性に関しては、この上なく雑な言い方をすればLed Zeppelin直系のサウンドと歌声
その強烈なインパクトのみならず、確かな技術と充実の楽曲でファンを増やしてきました。
あまりにも「直系」の音すぎてとやかく言われがちなのはご愛嬌、
シンプルなハードロックの格好よさと深い歌詞世界には、彼らならではの味わいは十分出ています。

Starcatcher / Greta Van Fleet (2023)
Starcatcher / Greta Van Fleet (2023)

1.Fate Of The Faithful 4:47
2.Waited All Your Life 4:26
3.The Falling Sky 3:39
4.Sacred The Thread 5:22
5.Runway Blues 1:17
6.The Indigo Streak 4:04
7.Frozen Light 4:33
8.The Archer 5:00
9.Meeting The Master 5:12
10.Farewell For Now 4:29

名手Dave Cobbが初めてプロデュースを務めたアルバム

Starcatcher / Greta Van Fleet (2023) ジャケットとブックレット
Starcatcher / Greta Van Fleet (2023) ジャケットとブックレット

クレジットされているメンバーは以下の通り。
Josh Kiszka (Vo.)
Jake Kiszka (Gt.)
Sam Kiszka (Ba.)
Danny Wagner (Dr.)


双子のジョシュとジェイク、その弟サムからなるキスカ兄弟と、
その友人のダニーからなるお馴染みの編成は今回も変わらず。

前作“The Battle At Garden’s Gate”(2021)のプロデューサーはGreg Kurstinでしたが、
今作ではナッシュビルを拠点とするDave Cobbが初めてプロデューサーとなっています。
HR/HM界隈でいえばSlash Feat. Myles Kennedy & The Conspiratorsの最新作“4”(2022)
再結成Europe“Walk The Earth”(2017)、そしてRival Sonsの諸作が特に有名でしょうか。

伊藤政則先生のライナーノーツを見る限りでは、ライブレコーディングを得意とし、
音にアナログレコーディングのような風合いを出すことに長けているとのこと。
どこか余白も残しつつ、スケールの大きな世界をのびのびと見せてくれています。

今作のブックレットやアーティスト写真では、
広大な砂漠を剣を携えて旅していくメンバーの姿を見ることができます。
その深遠な歌詞を見る限り、哲学と思索の旅を一貫して続けている彼らですが、
今作では今まで以上にファンタジーの要素を強めているのが特徴といえます。

全曲紹介

Starcatcher / Greta Van Fleet (2023) 裏ジャケと日本盤帯
Starcatcher / Greta Van Fleet (2023) 裏ジャケと日本盤帯

今作のジャケットに関しては、表・裏ジャケットともにエンボス加工が施されています。
(曲名の下の”Greta Van Fleet”というサインもしっかり立体)

1.Fate Of The Faithful 4:47
“Hail, the god song!”という歌いだしで始まる、どこかサイケデリックなオープニング曲。
サビの「オオオオオオ!」というジョシュのスキャットが耳に残ります。

レコーディングの際には、ギターの2弦をベンドしてピッチを全音(B→C#まで)上げる「Bベンダー」という装置を使用して、ペダルスティールのような独特の風合いをもたらしているとのこと。
寡聞にして知らなかったので調べてみましたが、かなり歴史が深くて面白かったです。
(Fenderのサイトに詳しくまとめられています。)

2.Waited All Your Life 4:26
1曲目の雰囲気を引き継ぎつつ、アコースティックで穏やかな雰囲気で進む曲。
旅の末にここまで辿りついた仲間を、両手を広げて歓迎するという内容。

3.The Falling Sky 3:39
先行公開シングル第4弾。
アルバム発売直前の公開だったためか、日本盤帯にはシングル曲である旨は示されていません。
お得意のブルースロック調のグルーヴで、ここから一気にギアを上げてきます。
“Anthem Of The Peaceful Army”(2018)の頃のエネルギッシュな雰囲気があって好きな曲。
ジョシュによるブルースハープも見事!ライブでもしっかり披露してくれています。
(せっかくなので公式ライブ映像を貼っておきます)

4.Sacred The Thread 5:22
先行公開第2弾。
イントロからツェッペリンの“When The Levee Breaks”のドラムパターンが炸裂。
ルーツを隠さない大ネタそのままのイントロも清々しくて嬉しいものです。
「聖なる糸」「夢の凧で風に乗る」という雄大でファンタジックな情景を描き出す、
ジョシュの伸びやかな歌声が見事な一曲。
リフやスキャットの入れ方など、全体の雰囲気は前作寄り。
ラストのハープのような音も良いですね。

5.Runway Blues 1:17
ここで唐突にアップテンポでテンションの高い曲が登場!
これは今までになかった試みで面白いしかっこいいぞ……と思っていると、
ギターソロとともにあっという間にフェードアウトしていきます。
The Detroit Newsのインタビューでサムの語るところによると、
ジョシュがこの曲を気に入らず、完成させたがらなかったためにこうなったのだとか。
少し残念ですが、そのような経緯を知ってから聴くと、
お蔵入りにせず断片だけでも聴かせてくれただけでもありがたいと思えてきます。
また、アルバム中盤にこの曲が配されていることで、リスナーがダレることも防げています。

6.The Indigo Streak 4:04
先行シングルではないですが、アルバム発売前からツアーでも披露されていた曲のひとつ。
ストレートなビートに乗る歯切れのよいギターリフとそこに絡んでいくベースライン、
そしてキャッチーで力強いハイトーンのサビメロ……と、非常に完成度の高い一曲。
ファズの効いたギターソロの絶妙な歪みもたまりません。今作のフェイバリットトラック。

7.Frozen Light 4:33
重量感のあるブルースロック路線。
こちらも力強く覚えやすいメロディで、魂を追い求める旅路の厳しさをうまく表現しています。

8.The Archer 5:00
ドラムパターンが面白く、リフと歌メロも相まって民族的な雰囲気を醸し出す一曲。
愛と復讐をテーマとした神話的な歌詞も面白く、惹きつけられます。

9.Meeting The Master 5:12
先行公開第1弾。この曲もライブでは既に披露されていました。
出会うことのできた自分の(魂の)師との別れのときを壮大に描きます。
アコースティックに始まり、徐々にストリングスが入ってきてギターソロと絡みあう様子は美しく、
ジョシュの澄んだ歌声も相まってまさに(アルバムタイトルにもある)星空を見ているかのよう。
大きなスピーカーでじっくりと味わいたい曲です。

10.Farewell For Now 4:29
先行公開第3弾。
先ほどと同じくアコースティックテイストの曲ではありますが、
こちらは一転してブックレットにある広い砂漠の景色が見えてきます。
優しく歌うラストの余韻まで美しい、雄大で爽やかなエンディング。
日本盤ボーナストラックを付けなかったのも英断といえそうです。

感想:スケールの大きさは残しつつ、繰り返し聴きやすい一枚に

Starcatcher / Greta Van Fleet (2023) ブックレット裏
Starcatcher / Greta Van Fleet (2023) ブックレット裏

Greta Van Fleetの出したEPとアルバムは今作を含めて全5枚。
・Black Smoke Rising(1stEP、2017)
・From The Fires(2ndEP、2017)
・Anthem Of The Peaceful Army(1stアルバム、2018)
・The Battle At Garden’s Gate(2ndアルバム、2021)
・Starcatcher(3rdアルバム、2023)


彼らは一貫して「愛、平和、連帯」を掲げ続けていて、
天からのメッセージのような深遠で美しい世界を我々リスナーに見せてくれています。
人間の暗い面にも目を向けつつ理想を説いた前作“The Battle At Garden’s Gate”(2021)は、
天上の音楽のような名曲“Heat Above”で幕を開け、
ラストにはコンセプチュアルな9分弱の長尺曲もある1時間超の大作でした。

しかし、打って変わって今作“Starcatcher”10曲43分という潔いトータルランニングタイム。
壮大で哲学的な思索の旅の雰囲気は残しつつ、繰り返し手に取りやすい構成になっています。
曲を練り上げながらのびのびとレコ―ディングを行ったDave Cobbの手腕か、
実験や遊びの部分も随所に見られる作品です。

また、先行公開された曲以外も軒並みキャッチ―で、
後半になるにつれてメロディが立ってくるのも飽きさせないひとつの要因ではないでしょうか。
原点に立ち返り、各曲のライブでの再現しやすさが増していることも重要なポイント。
生き生きとしたライブバンドとしての彼らの輝きも、まだまだ見逃せません。

余談ですが、ジョシュは今年の6月20日に、LGBTQ+コミュニティの一員であり、パートナーと8年にわたり良好な関係を築いていることをinstagramでカムアウト。愛することの自由を脅かす政治家を批判しています。世界に愛のメッセージを発信し続ける姿勢は応援していきたいですね。

Amazon.co.jp: スターキャッチャー: ミュージック
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Starcatcher / Greta Van Fleet (2023)

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