サンテリ・カリオ(Key.)大活躍!美メロ満載の最新作

時にメロデス、時に耽美的、時に踊れる哀愁メロディを生み出してくれる
フィンランド出身のAmorphis。
個人的には名前こそかねてより知っていましたが、
メタル初心者の当時はグロウルがあるということで尻込みしており(勿体ない……)
2023年のLOUD PARKでの来日告知BGMになっていた
“The Moon”に惚れこんで以来の新参ファンです。
旧譜も集めながら今か今かと待ち焦がれつつ、
今回がリアルタイムでの新譜初購入と相成りました。
15thとなる今回の新作“Borderland”、
ジャケットの白鳥が目を惹きますが、
これは歌詞のテーマとしているフィンランドの民族叙事詩「カレワラ」に登場する、
黄泉の国トゥオネラの白鳥とのこと。
表題もこの世とあの世の境界を指しているものと思われます。
歌詞を手掛けているのは芸術家ペッカ・カイヌライネン。
外部の詩人が歌詞を手掛けているところには初期King Crimsonを感じたりも。
今作のアートワーク、彼が歌詞を手掛け始めた傑作
“Silent Waters”と似た構図なのもファンには堪らないことと思います。
収録曲

1.The Circle 4:35
2.Bones 4:55
3.Dancing Shadow 4:59
4.Fog To Fog 5:29
5.The Strange 4:19
6.Tempest 5:21
7.Light And Shadow 4:18
8.The Lantern 5:00
9.Borderland 5:31
10.Dispair 5:21
日本盤ボーナストラック
11.Weavers 5:21
内容の話に移ると、今作で特筆すべきは
エサ・ホロパイネン(Gt.)と並んでソングライティングの中核をなす
サンテリ・カリオ(Key.)のペンによる曲の多さ!
今までのキャリアを通しても今作が突出しています。
なんと本編10曲中7曲!
そしてこのサンテリの曲ですが、
とにかく哀愁溢れるメロディが特徴的なものが多い!
自分のような哀メロ好き勢からすれば
「もしメイデンのデイヴ・マーレイが多作なら……」
という夢が叶ったかのような夢の存在(?)。
一部を羅列してみるだけでも
“Silent Waters”にSky Is Mine”、
そして“Mermaid”に“The Golden Elk”、
前作収録の“The Moon”……と、美しくフックのある名曲ばかり。
トミ・ヨーツセン(Vo.)はグロウルもクリーンも恐ろしく高いレベルでこなすのがウリですが、
そんな彼の歌心あふれる太くて豊かなクリーンボイスを
最大限に活かしてくれるのがサンテリ曲だと自分は思っています。
先行シングルのひとつ“Dancing Shadow”は、
まさにこれぞ!と言いたくなるような強力な一曲。
ダンサブルなビートの推進力とメロディの展開、そしてコーラスでの転調。
このアルバムを象徴するような曲なので、まずは是非一聴を。
アルバムにおいては、先述した“Dancing Shadow”の直前に、
グロウル全開でブルータルな“Bones”がくるのがまた劇的な対比になっていて、
Amorphisの懐の深さを感じさせてくれます。
(ちなみにこちらはエサの曲)
そして中盤のハイライトはサンテリ色の強い“Light And Shadow”!
こちらは先行シングル第一弾。他の追随を許さない、踊れる哀愁北欧メタルの世界が顕現しています。
全体的にブルータル成分は薄めで「哀」の表現に大きく舵を切った作品ではありますが、
コンスタントに秀作を出し続けているバンドなのでこれは今作の味とみてよいはず。
トミ・ヨーツセンの声に宿る神通力のようなものが堪能できるので満足。
ダンサブルな哀メロ路線の楽曲が並ぶ中にも、
力強くズンズン突き進む“Bones”や、
中盤のじっくり聴かせる”Tempest“などがバランスよく配された構成が光ります。
(“The Lantern”のイントロの高揚感も見逃せません)
「グロウルやデス成分の強いものはあまり……」という方にも自信をもってお勧めできる一枚。
日本盤の収録曲はボートラ込みの11曲。
“Weavers”はヤン・レックベルガー(Dr.)のペンによるもので、
間奏でドラムとキーボードがギアを上げはじめるところは興奮モノ。
盤面と帯裏、ブックレット裏はこんな感じ。
日本盤にしかない帯の裏にもイラストを仕込んでいるあたり、
「モノとしてのCD」へのこだわりを感じて個人的にはグッときました。
(元はブックレット内のイラストの一部とはいえ、この細やかさが嬉しい)

ちなみにEU盤には“War Band”, “Rowan And The Cloud”という2曲が収録されています。
彼らのボートラは質の高さのみならず、
そこに「味変」ともいえるキャッチ―なメロディを備えたものが多いので、
手に取る機会があればこれらも是非聴いてみたい……
これは完全に余談ですが、
今作のジャケットにある「トゥオネラの白鳥」といえば、
同郷のKorpiklaaniの秀作“Manala(コルピと黄泉の世界)”(2012)
とも同じモチーフですね。
“Rauta”や“Ievan Polkka”が入っていることでも有名な一枚。これもお薦め。

